1.課外研修
「ゆかり君、次の研修先は決まったかね?」
「あ、学園長。いえ。それはまだこれからですけど」
「生徒たちになるべくたくさんの経験を積ませる。それがこの学園のモットーだ。座学だけでは得られない体験をさせるのが重要なのだよ」
いつ、そんなモットーを作ったのよ。いつもその場限りの適当なことを言い出すんだから。
「でも、もう温泉旅館は」
「ああ、それはやめといたほうがいいな」
なにか確信を持っているような言い方……あ、そうか。いつものアレだ。なにか思いついたのだ。それなら下手に出て言わせればいい。
「どこかいいところ、ご存じありませんか?」
「もうじき夏休みだ。それを使って、ヌーディストビーチなんかはどうだろうか」
「ヌ、ヌーディストビーチですか?!」
「そんな大声を出さなくても聞こえる。じつは私の知り合いがギリシャにホテルを建てて、そのすぐ前にヌーディストビーチを開設したんだ。宣伝に協力してくれるなら、宿泊費は無料でいいと言っているんだが」
やっぱり、最初からそれが目的だったのね。
「ギリシャでヌーディストビーチといえば、ミコノス島ですか?」
「いや、サントリーニ島だ」
「サントリーニ島? にヌーディストビーチなんてありましたっけ?」
「そいつが作ったそうだ。だから宣伝をしたいのだろう」
「宿泊費無料とは豪勢ですね。しかし宣伝に協力、といいますと?」
「宿泊者は、現地の写真を撮って毎日インスタに上げる。というのが条件だそうだ」
「それはもちろん、日本の法律内での写真、ですよね」
「まあ、そこはグローバルスタンダードというか、な?」
な? じゃないっての。あからさまに期待してるじゃないの。
そんな内輪話があったあと、生徒たちにゆかり女史から計画が発表された。
「みなさん。当学園ではこの夏休みに、格安で行ける海外ツアーを開催することになりました。6泊9日の旅となります。学園長のコネで、現地での6泊分の宿泊費が2食付きですべて無料になります!」
それを聞いた瞬間に生徒たちから歓声が上がった。
「すげぇ。海外なんか俺行ったことねぇよ」
「俺、パスポートすら持ってない。取らなきゃ」
「えっと、それならピザとかいうのも取らないと?」
「あ、俺、マルゲリータがいいな」
「誰が宅配ピザの話をしてるのよ! いい加減な知識を広めないで。日本人なら90日以内の観光ビザは申請不要よ。パスポートだけで入国できるわ」
「みんな落ち着いてよ。それで先生、行き先はどこですか? それによっては」
「ギリシャです」
再び歓声が上がった。憧れの海外旅行。しかもヨーロッパ屈指のリゾート地・ギリシャ。そこに宿泊費タダで行けるなんて。まるで宝くじに当たったような気分であった。
憧れの楽園。あふれる太陽に美しいビーチ。そして裸同然の女の子。男子生徒はすでに妄想に浸っていた。
女子生徒とてそれは同様であった。南太平洋の楽園。あふれる太陽に美しいビーチ。そして裸同然のたくましい男の子。新婚旅行の下見になんてちゃっかり屋さんもいた。
「せ、先生。お金はどのくらい必要ですか?」
「格安航空券を使えば、往復の旅費7万円ほどで済みます。あとは昼食代とお土産を買うぐらいね。物価は安いですから1日2,000円ほどあれば十分過ごせます」
みたび歓声が上がった。
「それでは参加希望者は、こちらの申込用紙に記入して提出してください」
行った先のことを聞くこともなく、勢いで書類にサインをしてしまったのである。
じつはこの企画は、DODOTVの『世界の果てまで行ってDo!』というという番組内で立ち上がったもので、TV局の取材協力という建前で格安海外旅行に行けることになったのである。
しかしその内容は『ヌーディスト村体験レポート』となっており、生徒たちはこの旅行で、無料という言葉の意味を嫌というほど体感するのである。
2.フライト
「着いたぁぁぁぁ!!」
「ちょっと、アキ。恥ずかしいからお上りさん的歓声は止めて!」
「だって、やっと着いたんだもの。苦節22時間。まっすぐくれば15時間で着くところを、乗り換え乗り換えを繰り返して飽きるほどトランジットをやって、やっと着いたのよ」
「苦節はなんか違うと思うけど」
「若いときの苦労は買ってでもせよってね」
「買ってないから。むしろ倹約するために苦労したんだから」
ここはサントリーニ島。アルファベットのCの字と表現される、そんな形をした地中海の島である。
C組女生徒たち全員は、格安チケットばかりを使って5回飛行機を乗り換え、22時間かけてようやくサントリーニ空港に着いたのであった。
「ツアーっていうからただバスに乗っていれば着くものだと思ってた。こんなに大変だとは」
「昔の農協じゃないんだから。海外旅行って団体料金はさほど安くないのよ。だから男の子たちとは別のチームに分かれたのよ。往復5万5,000円で航空チケット取った私に感謝してよ。間違いなく世界最安値よ」
「アキの苦労は知ってるけど、チケットが安かった分途中で降りた空港で飲み食いしたから、トータルではあまり変わらないような?」
「それは誘惑に負けた七瀬が悪いのよ」
「アキが一番食べてたじゃないの!?」
格安チケットあるあるである。そこに。
「おーい。遅かったな。迎えに来たったで」
と元気にやってきたのは八郎である。男子チームはあまり緻密な調査はせず、ネットで検索して一番上に出てきたコースを使ってやって来た。面倒なことが嫌いな八郎の選択であった。
費用はアキたちの5割増であったが、アキたちより1時間ほど早く着いただけであった。
八郎はこのことで(時間の割にかかり過ぎた渡航費のために)グループメンバーにこっぴどく怒られるのだが、それは後の話である。
3.入村
ようやくメンバーがそろい、全員がホテルの前に到着すると、そこで待ち構えていたのは、ヌーディスト村を経営する村長と呼ばれる爺さんだった。
「ようこそ、我が村へ!」
「誰、あれ?」
「いま村長って言ったね」
「なんて日本語の達者な爺さんだ」
「日系人みたいだな。フランス系か?」
「それではこれから、この村に滞在するためのルール説明を行いますじゃ」
生徒たちを集会所のようなところに案内し、爺さんは言った。
「ワシはマティス・カトウ・エミールという。この村を運営している日系フランス人じゃ。10才まで日本で暮らしていたので日本語はかなり話せる。分からんことがあればなんでも聞いてくれ。あ、ワシのことはマティスと呼んでくれ」
そう言ってマティスは説明を始めた。それを聞いているうちに、生徒たちは青ざめた。その内容を列挙すると以下の通りである。
1.この村は男女同伴もしくは女性同士でしか入村できない。
2.この村では四六時中衣服も下着も身に付けてはいけない。もちろん食事のときも、街を歩くときもすべてである。
3.この村ではアンダーヘアーは不浄なものとされる。よって下半身の毛はすべて剃らねばならない。
4.この村ではSEXはオープンで自由。但し相手の合意の上で行うこと。レイプ等は一切禁じる。
「そ、そ、そんなむちゃくちゃな?!」
「おいおい、まさか俺たち素っ裸でずっと過ごすのか?」
そこにフォローに入ったのはゆかり女史である。
「えー、こほん。本研修の目的は、西欧のヌーディズム文化に触れてさらに体験することで、日本の混浴文化と融合させることにより、新しい価値を創造しこれを日本の温泉開発に生かす、ということです」
言っている本人も意味が分かっているわけではない。それらしい言葉を並べているだけである。
「最終日にはレポートを提出していただきます。出せない人には単位が出ませんのでそのつもりで」
ま、まさか、こんなことって。
俺たち。私たち。
「「「ゆかり女史にはめられた?!」」」
今頃になって気づく生徒たちであった。
生徒たちはそのままコテージに誘われ、そこで着ているものをすべて脱ぐように指示された。男女を分ける仕切りもない。ロッカーもない一室である。
「ねぇ、私たち本当にここで脱ぐの?」
「アキ、わっきゃ男の子ど一緒なんて嫌よ!」
「汐音。脱いだあとはどうせ一緒になるのよ?」
「だって優菜、それどこぃどは意味が……」
「違わないと思うわよ。さぁ、さっさと脱いでビーチで遊びましょう」
「男どもは、そっちの壁を向いて脱ぐように。私たちはこっち向くから」
仕切ったのはアキであった。汐音に配慮したという形だが、アキとてこんなことが平気なわけではない。結局同じだとは思っても、隠しきれない羞恥というものがある。そんな中、さっさと脱ぎ始めたのは優菜であった。そして優菜はすでにアンダーヘアーの処理を終えていた。
「ゆ、優菜。あんたパイパンなの?」
「まさか。普段から剃ってるのよ。いまどきはこれが普通よ」
「普通って、そんなウソよ」
「なに言ってるのmet-art(*)のモデルさんを見てごらん。みんなつるつるに剃っているから。いまはそれが普通なの」
- met-art:アメリカで超人気のソフトコアな欧米人ヌードサイト。
「そんなの知らないわよ。日本人の文化じゃないでしょ、それ」
「あら、私もいつも剃ってるけど?」
「私も」
「あら、私だけじゃなかったのか」
穂波、キャサリン、ハンの三人である。
「「「えええっーー!!」」」
よく知っているはずの人間同士でも、こんな文化的ギャップがあるのかと、思い知らされたアキであった。
「なにはともあれ、脱ごう。おいっ八郎、こっち見んな!」
「あとからどうせ一緒にな……」
ゴ~ン
アキが投げた金属製の灰皿が、八郎のアゴに命中した音である。
男子が全員壁側を向いたことを確認して、アキが言った。
「優奈じゃないけどこんなところで時間とってたらもったいないわ。さっさと脱いで、ビーチに行きましょう」
この時点で、剃毛のことなどすっかり忘れているアキである。だいたい目の前にある問題以外には頭が回らないタチなのである。それがカリスマ性にもなっているのだが、そのためにあとからひどい目に遭うことも多いのである。
(痛たたた。しかしだな、壁側を向いているかと言って、後ろが見えないわけじゃないのだよ、ワトソン君)
(誰がワトソン君だよ。なんでスマホをそんなとこに……おおっ)
(しー! 静かにしたまえ、ワトソン君。このスマホのレンズは表と裏の両方に付いているのだよ。それをこうして壁のここにひっかかけて、録画モードにすればだな)
(おおっ。女の子たちが丸見えじゃねぇか。八郎も役に立つことがあるんだな)
(失礼だな、おい)
八郎のスマホは、自撮りができるようにディスプレイの前面にもレンズが付いている。これを壁に少しだけ出ていた釘に引っかけると、それなりに固定される。そこには、アキたちがヌードになってゆく姿が映るのである。
(すげぇ、まっさきに脱いだのは優菜か。いいケツしてやがるぜ)
(アキだってでかいのは乳だけかと思ってたが、ケツもでかいな。あれは安産型だな)
(いいか、お前ら。これではケツしか見えない。だが、これを使えばタイミングが計れるんだ)
(タイミング?)
(そう。女の子たちが、全部脱いで、こっちを見た瞬間、俺たちも振り返る。そうすれば)
(な、なるほど。そのときには)
(なにもかもを観察し放題ってことだよ)
(そのために、俺たちはさっさと脱いで準備しておこうぜ)
(な、なぁ、八郎)
(なんだ、二郎?)
(そんなことしなくても、俺たちが先にコテージの外で待っていればいいんじゃね?)
(……あれ?)
(まったく、八郎は頭を使っても役に立ったことがないな。さっさと脱いで隠れて覗くことのできる場所で準備しておこうぜ)
(け、結論は変わってないからセーフ)
八郎には、カリスマはまったくないようである。そして全裸になると。
「俺たち、先に行ってるからな」
と声をかけてコテージを出て行った。
それを聞いて女の子たちは安心して脱ぐことができた。アキは全員が脱ぎ終わったのを確認して声をかけた。
「みんな脱ぎ終わったわね。じゃあ、さっさとビーチに出るわよ」
●さて学園のヒロインたちは、どんな姿で登場するのか!ここから先を読みたい方はログインしてね。
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東京テルマエ学園 本作品を読みたい方はこちらまで。本編も読めば、2度美味しいです(笑)
https://tokyo-terumae.com/
妄想が加速しました笑
続きが気になります!
このイラストは誰が描いてるのでしょうか?
絵師さんの名前を教えてください!!!
ヌーディストビーチかー
一度は行ってみたい!
ヌーディストビーチ、行ってみたいですねー
設定が斬新ですね!
妄想がかき立てられるww
ヌーディストビーチ…1度は体験したいかもw
ヌーディストビーチ、この間行きました
トロントアイランドにあるビーチですが、ラビアピアスしているのも見えたりして
勃起しないようにするのが大変w
この漫画凄い描写がセクシーですね
びっくりです
凄くエロイ!こんなのが実在したら凄いだろうなぁ~☺️
ヌーディストビーチは男の夢ですね
行ったらエロいこと考えなく自然な光景といわれたことがありますが下心なしでバカンスできるでしょうか
なんでそんな海外のヌードサイトに詳しいのww
ヌーディストビーチ日本でもできてほしい
めっちゃ続き読みたい~!
絶対おもろいやんこんなん
続きが気になる展開ですね!
いってみたいな、こんなビーチ
文章だけで面白いですね
続きが楽しみです
文字でも妄想膨らみますが、実写版が見たくなってしまいました。
ヌーディストビーチは男の夢かな〜
でも、恥ずかしいのね
ヌーディスト村って実際あるのかな…ありそうだなぁ…
実写版がでることに期待しています!
そそる文章構成でよきです!!
みたい!!
そそる文章構成でよきです!!
みたい!!!